恋はまるで、粉雪のようで。
「無理です」


「どうして?」


「どうしてって・・・私はあなたのこと何も知らないし、好きじゃないし」


「じゃあ、これから好きになってよ」


どんだけ自分に自信があるんだ。


「好きになりません、年上だし、こんな私に固執する理由がわかりません」


「ひなたさん、こんなにかわいいのになんで卑下するわけ?」



なんだこれ。


どこか物陰に年下男の連れが潜んでいて、私がおちるか賭けでもしてるんだろうか。



「とにかく、無理です!」


一刻も早く、逃げたかった。


立ち上がろうとした私の手を、年下男は握ってきた。


「もう離さない」


ひさしぶりの男性の手に、ドキッとしてしまった。


顔が熱くなって、まるで金縛りにあったみたいに動けない。


「俺のそばにいて」


私の目をじっと見つめる視線が、痛い。



でも、こんな言葉、絶対に信じられない。


私は、ありったけの力をふりしぼり、手を振り払った。


バッグを手に取り、走って店を出た。


「待ってよ!」


年下男の声が背中から聞こえたけど、無視してどんどん走った。









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