恋はまるで、粉雪のようで。
どこまでもポジティブなんだな、年下男。


ある意味、うらやましい。


私はいつも自信がなくて、仕事でミスをしないようにするのが精一杯で、趣味は読書と貯金、清潔感と楽でいられることを優先した洋服ばかりで、メイクも地味で、冒険とか無縁で。


今日みたいな休日は、スッピンにメガネでとても外出なんかできなくて。


どうしたらそんな風に、自分の気持ちを素直に伝えられるんだろう。


返事をすることもできないまま、その日は眠りについた。



浅い眠りで、何度も起きたから、翌朝ぜんぜんスッキリしてなかった。


パジャマのままコーヒーとシリアルとヨーグルトっていう簡単な朝食をすませ、スーツに着替えてメイクをする。


コートを着ようとクローゼットを開けたら、ベージュのコートをかけているハンガーが空のままぶらさがっていた。


しかたなく、黒のコートをはおって出かけた。


黒は、地味な私がますます暗く見える気がして、なるべく着ないようにしていた。


ベージュも決して地味じゃないとは言えないけど、黒よりは明るいから最近はよく着ていた。



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