恋はまるで、粉雪のようで。
みんなに囲まれて座る新井さんを離れた席からながめながら、ビールをジョッキで飲む。


私は、女子が好む甘いカクテルが苦手で。


まわりの女子社員を見ると、みんなカクテルやらサワーやら、カタカナだらけの名前の飲み物をちびちび飲んでる。


最近の若い子は、男女問わずビール離れが進んでるっていうけど、本当なんだな。



「小山内主任、まだビールですか?」


「うん」


気をつかったのか、私に話しかけてきたのは、本田奈緒(26)。


女子力高くて、私とは正反対のタイプ。


今日も、男子が好みそうなフワフワした服を身にまとい、クルクル巻かれたセミロングの髪もきれいで。


少しの隙もなくオシャレするなんて、偉いなあ。



「そういえば小山内主任って、A女子大出身でしたよね?」


「そうだけど」


「今の彼氏がB大出身なんですけど、A女子大とのインカレサークルに入ってたって聞いたんで、小山内主任はどうだったのかな、と思って」


「・・・忘れちゃった」


「そうですか」



それ以上聞きたいことはなかったのか、本田さんは他の人と話し始めた。


さびしくなんかない。


年齢のギャップもあるし、共通の話題はあまりにも少ない。



でも、私は、小さな嘘をついた。


忘れてなんかいない。


そのサークルに、私は入っていたし。




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