恋はまるで、粉雪のようで。
正直、年下男が私と付き合いたいなんて、信じられないし。


それに、恋愛経験1人だし、10年のブランクはあるし。


こんな地味で年上の私の、どこがいいのかって思う。



でも、まっすぐに気持ちをぶつけてくる年下男の言葉は、私の凝り固まった心を少しずつ溶かしてくれている気がする。



「ここ、ランチでは来たことあるんだけど」


案内してくれたのは、イタリアンのお店。


明るいチェックのテーブルクロスに、ピザを焼く石窯。


若いカップルが好みそうなお店だ。


でも、平日なのにほぼ満席だから、人気があるんだろう。


シェアできるよう、パスタとピザを頼み、二人とも1杯目はビールにした。



ビールの力を借りて、少しだけど、心を開いて話せた。


櫂くんは、会社で使われてるコピー機やFAXの定期的なメンテナンスをしたり、修理依頼があったら駆けつける仕事をしていて。


「うちの会社でも呼んだことあるよ、紙たくさん使うから、たまに調子悪くなって」


「使用頻度が多いと、部品を交換しなきゃいけないことがあるからね」


私が不動産会社で働いていて、お局2年目で若い子に煙たがれてて、でも仕事はやりがいがあって楽しいって言ったら、


「ひなたさんなら、安心して部屋探し任せられそう」


1本だけある八重歯ののぞく、チワワの笑顔で答えてくれて。






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