恋はまるで、粉雪のようで。
ビールで乾杯したあと、


「私、櫂くんに謝らないといけないことがあって」


「なに?」


「コートを持って待っていてくれた日、会社に遅刻したんじゃないかと思って」


「ああ、あの日はたまたま得意先へ直行の日だったから、大丈夫。


でも、あと10分くらい待って来なかったら、ロッカーに入れて電車に乗ろうと思ってた」


「ごめんね、私のせいで」


「会えたからいいんだよ、結果オーライでしょ」


「あとね、私と会社の休みも合わないし、就業時間もずれてるし、今日みたいに待たせちゃうことばっかりだから、悪いなぁって」


「ひなたさんは、気つかいすぎ」


「えっ?」


「俺はひなたさんの彼氏なんだし、大好きなひなたさんを待ってるのは全然苦じゃないから。


休みが合わないのも、俺が火曜か水曜に有休とればいいんだし、俺の会社は有休消化を積極的にするように言ってるくらいだから、平気」


「でも、すれ違うことばっかりで」


「大事なのは、気持ちがすれ違わないことじゃない?


相手を大切に想っていれば、いいと思うけどな」


ニコニコ笑う櫂くんを見てると、心からそう思ってくれていると感じられて、嬉しかった。





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