恋はまるで、粉雪のようで。
火曜の夜は、仕事帰りに櫂くんがうちに来てくれて。


私が作ったごはんを一緒に食べて。


おいしい、って喜んでくれたのは嬉しかったんだけど。


本当は、朝まで一緒にいたいって思っているんだけど。


10年のブランクが、私をとどまらせる。


10年も一人だったなんて知られたら恥ずかしいし、嫌われそうで怖い。


女として魅力がないって、告白しているようなものだから。



後片づけをして、コーヒーを入れて、ふたりで並んでソファーに座る。


「あっ、マグカップおそろいで買ってくれたんだ」


「うん、気に入ってくれた?」


「もちろん」


「スーツだと、あんまりくつろげないね」


「じゃあ今度、部屋着持ってこよう」


部屋着=泊まりって意識しちゃって、返事もできずに黙ってしまう。


「そんな顔しないでよ、ひなたさんが受け入れてくれるまで、待てるから」


優しい顔で、キスしてくれた。


男としては、やっぱり征服欲とか性欲があるから、きっと我慢してるんだろうな。


それに応えられない自分が、情けなかった。



櫂くんは終電まで一緒にいてくれて、キス以上のことはしなかった。


すべてが10年ぶりの私にとっては、しばらくキスだけで充分だけど、きっと櫂くんはそう思ってないはず。


これからどう接したらいいんだろう。


せっかく彼氏ができたのに、また新たな悩みが増えてしまった。




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