恋はまるで、粉雪のようで。
櫂くんは、トマトリゾットもサラダも完食してくれて。


「ひなたさん、やっぱり料理が得意なんだね、すごくおいしかった。


ごちそうさま」


いいよ、って断ったのに、食器を洗ってくれて。


「もう少しビール飲む?」


って櫂くんにすすめたら、


「じゃ、ソファーで一緒に飲もう」


ソファーをポンってたたいて、隣に座るようにうながされた。


ビールとナッツを持って行った私は、まるで従順な犬のように、素直に櫂くんの隣に座った。


今日、祐子と美佐に会った時の話をしながら、二人に言われたことを思い出した。



櫂くんに、今の不安な気持ちをうちあけようか。


それとも、まだつきあい始めたばかりだし、もう少しこのまま過ごそうか。



そんな私の迷いを見抜いたかのように、櫂くんは私の髪にふれながら、そっとキスしてくれた。


「なにかあった?」


「ううん、ないけど」


「けど?」


「なんでもない」


「なんでもない、って顔してないけどな」


そんなに顔に出ちゃってるのかと思って、思わず目を伏せた。





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