恋はまるで、粉雪のようで。
そして、大学3年になったばかりの春。


私は、B大学の同い年の人が好きだった。


私の知る限り、彼女はいないし、変な噂も聞かなかった。


その人は、山之内修(やまのうちしゅう)くん。


お互いに『修くん』『ひなたちゃん』と呼びあい、仲が良かった。


2年の秋の文化祭あたりから、飲み会でも自然と隣の席になることが多くなり、いつしか二人だけで出かけるようになっていた。



「俺とつきあってください」


と、居酒屋で修くんに告白された夜、私はバージンを卒業した。


それからの3ヶ月、時間が許す限り一緒にいた。


付き合う少し前に、私の両親が海外で暮らすことになり、私は都内の実家で一人暮らししていたから、修くんは週末のたびにうちに来ては私を抱いた。



何度も何度も抱かれて、私は知らなかった悦びを知った。



つきあうってことは、好きな相手がいるってことは、こんなにも幸せなんだと実感していたのに。


修くんは、私に別れを告げた。


「ごめん、ひなたの体に飽きた」


そんな、思ってても口にしちゃいけない言葉で。



7月後半の、梅雨がまだ明けそうもないジメジメした日曜日だった。




私は、傷ついた心を抱いたまま、体を痛めつけるように就活に打ちこみ、今の不動産仲介会社から内定をもらった。


そして私は、修くん以外の男を知らないまま、今に至る。


もう、誰かを好きになる気力はなくなったままだ。









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