恋はまるで、粉雪のようで。
朝から3件も見て疲れましたね、とか。


今日は本当に寒いですね、とか。


もうすぐお昼ですから、どちらかご希望の場所があればお連れします、とか。


車内の会話は適度にあったと思う。


信号待ちをしていたのは、池袋の近くだった。


先頭で青信号に変わるのを待っていた。


ワイパーがゆっくり動いていて。


なんとなく、横断歩道を渡る人たちを眺めていた。




ワイパーが動いて、視界がクリアになった瞬間。


私の目の前を横切ったのは、櫂くんだった。


櫂くんは、一人じゃなかった。


フワフワした髪の若い女の子が、隣で櫂くんの腕を引っ張っていた。


櫂くんは、その子と一つの傘に入っていて。


今日は日曜日。


そういうことか、と妙に納得している自分がいた。


二股かけられてたんだ。


冷静に冷静に、と自分に言い聞かせていたけど、実際はテンパっていたらしく、信号が青に変わったのに動かなかったから、後ろの車にクラクションを鳴らされた。


「すみません」


後部座席の二人に謝って、発車させた。





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