恋はまるで、粉雪のようで。
『櫂くんとつきあい始めたけど、二股かけられてたみたいで、たぶん別れると思う』


送信したら、速攻で返事がきた。


『いま出先でゆっくり話せないから、19時以降で都合のいい時間に電話して。


私はいつでもいいから、絶対だよ!』


美佐に話しても何か変わるわけじゃないけど、誰かに話せばスッキリするかもしれない。


この前会ったからか、急激に親しみが増した気がした。


持つべきものは、彼氏じゃなくて女友達だ。



残務処理を済ませて、家に着いたのは22時過ぎだった。


最寄り駅や家の近所に櫂くんが来てるんじゃないかと思って、ソワソワしてしまった自分が恥ずかしかった。


気持ちの整理がまだつかないから?


まだ櫂くんのことが好きだから?


いっそ、はっきり『別れよう』って言ってほしいのに。


そしたら、あきらめつくかもしれないのに。



家に入って部屋着に着替え、美佐に電話した。


美佐はワンコールで出てくれた。


『もしもし美佐、遅くなってごめんね』


『ううん平気だよ、それよりひなた、どういうことなの?』


日曜に見た風景をそのまま伝えた。


『なんだ、まだ榎本くんから直接聞いたわけじゃないんでしょ、会って話さなきゃダメだよ』


『もうこれ以上、傷つくのはイヤだから』


『だけど、このまま本当のこと知らないままでいいわけ?』


『本当のこと知ったところで、結果は何も変わらないよ』


『そんなことない、本当に二股かどうかわからないし、万が一そうだったとしても、榎本くんの態度しだいじゃ許せるかもしれないよ』



許す?


私が櫂くんを?


そんな風に思ったことなかった。












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