恋はまるで、粉雪のようで。
それから、警察官に状況を説明した。


刑事さんも鑑識の人も来て、部屋中の指紋と足跡を採取していた。


「取られた物はなんですか?」


と聞かれて初めて、何もチェックしていなかったことに気づいた。


寝室のクローゼットの引き出しに入れていた生活費5万円くらいと、貯金箱がなくなっていた。


「現金のみの被害なら、怨恨なんかじゃなく運悪く入られたってことでしょう。


窓も30cm開けば入ることができるんですよ。


警報音が鳴る装置や二重ロックを、1階の窓だけでも設置するといいですね」


「はい、ありがとうございます」



そこでまた、インターホンが鳴った。


櫂くんが来てくれた。



「櫂くん・・・」


「ひなたさん、大丈夫?」


久しぶりに会った櫂くんは、それ以上何も言わず抱きしめてくれた。



「小山内さん、そちらの方は?」


ハッと我にかえって櫂くんと離れ、何て説明しようと考えていたら、


「恋人です」


櫂くんがはっきりと即答してくれた。



「では、あなたもこの家に来たことはありますよね?」


「はい」


「では、何点かおうかがいした上で、指紋のご協力お願いします」


「わかりました」



櫂くんが恋人だって言ってくれた。


この場限りのことでも、嬉しかった。



近辺のパトロールを強化します、と言い残して警察の人たちは帰っていった。









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