恋はまるで、粉雪のようで。
しんと静まり返った部屋に、櫂くんと二人きりになった。


何から話せばいいんだろう。


まずは、謝らなきゃ。


「ごめんね、こんなことで呼び出して」


「なに言ってんの、こんなことなんかじゃないよ」


「もう大丈夫だよ、ありがとう」


「掃除手伝うよ」


「えっ、でも・・・」


「朝まで一人で平気なわけないでしょ?


俺をもっと頼っていいんだから。


母さんにも、彼女が大変だから泊まってくるって言ってきたから平気」


それから二人で、割れたガラスを片づけたり、ガラスがなくなった窓に段ボールを貼りつけたり、掃除機かけたり床をふいたりした。


ふと時計を見ると、もう深夜0時をまわっていた。



「ひなたさん疲れたでしょ、お風呂入ってきたら?」


「・・・あんまり気が乗らないな」


「じゃ、一緒に入ってあげよっか」


「それはいいです」


突然、櫂くんが私をフワッと抱きしめた。


「やっと会えた、電話もつながらないし、駅では捨て台詞残して行っちゃうし」


「だって、櫂くんにはあの子がいるじゃない」


流れで思わず、本音をしゃべっちゃった。


「あの子って誰?」



空き巣に入られた夜に、きれいさっぱりフラれるってことか。


もうどうでもいいや、これ以上最悪なことはないし。



「池袋で私見たんだよ、櫂くんが女の子とひとつの傘入って歩いてたの」


真剣に話す私を見て、櫂くんは私にキスをした。


「なっ、なに?」


思いっきり動揺する私に、櫂くんは笑いながら言った。


「あの子は、会社の後輩。


偶然会って、傘持ってなかったから駅まで入れてあげただけだよ。


ひなたさんは、俺が雨なのに傘を持ってない知り合いに会っても、傘に入れない男の方がいいってこと?」


「そうじゃないけど・・・でも、あの子は櫂くんの腕を引っ張ってたから」


「そうだったっけ、彼女が急いでたからかも。


彼女は帰国子女だからかな、誰にでもスキンシップ多めなんだよね。


でも、ひなたさんに勘違いさせるようなことして、ごめん」


「そ、そうなんだ」



なんか、納得できたような、でも少し不安なような、変な気持ちになった。





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