恋はまるで、粉雪のようで。
月曜日の早朝、朝食をすませた櫂くんは少し名残惜しそうに、


「ひなたさんのこと心配だけど、仕事だから行くよ」


と、玄関でキスをして出ていった。



土曜の夜からずっとそばにいてくれて。


私が仕事してる間に、必要なことを代わりにやってくれて。




急にいなくなったら、さみしくて不安でたまらなくなった。


おかしいな、いつから私は、こんなに弱くなっちゃったんだろう。



明日は休みだから、それだけのために仕事を頑張った。


もうすぐ本社へ異動になるし。


そういえば、異動の話まだ櫂くんにしてなかった。


休みが合うようになるし、喜んでくれるかな。



その日、家に着いたのは21時近かった。


家の明かりがついていたけど、これは私がわざとつけていったから。


防犯のために、できることは何でもやろうと思って。



「ただいま」


誰もいない家に入って、いつものようにつぶやく。


長年一人で暮らしていると、独り言が普通になるから怖い。



だけど、今日は違った。


「おかえり」


櫂くんが笑って、出迎えてくれたから。



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