恋はまるで、粉雪のようで。
翌朝、ポカポカあったかい陽気に誘われて、櫂くんと車で出かけた。


私が運転するのを見ながら、


「ひなたさん、見た目は運転苦手そうだけど、うまいね」


「運転は好きだから、一人でドライブしたりするよ」


「これからは俺も誘ってよ」


「はい」


「はい、ってなんか他人行儀だな」


「だって、なんでも櫂くんに甘えてばっかりだから、悪いなぁって思って」


「もっと俺に甘えてよ」


「いいの?」


「当たり前だよ、ひなたさんは遠慮しすぎ」


「私は、櫂くんがずっとそばにいてくれるだけでいいの」


「もっとワガママ言っていいのに」



本当に、言ってもいいなら。


私と結婚して、一緒に暮らして、って言いたい。


でもそれは、ワガママすぎるって思うから、何も言えない。



目的地の海に着いて、駐車場から手をつないで歩いた。


平日午前中だからか、砂浜には誰もいない。


二人で座って、波の音に包まれた。





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