桃色アルバム
「で、カバの弱点。聞かしてもらおーじゃん」

なんとか笑いがおさまり、渡部がケイタに向き合った。
「あぁ。このまえ散歩してるとき、カバを見たんだ」

カバはひとりでブランコに座ってため息をついていた。
ケイタは気になったので、木のそばから様子を見ていると、ブランコの鎖を握っている自分の手元を見たカバがいきなりぎゃっと叫んで転がるように公園を出て行った。

「なにがあったのかわからなかったから、ブランコのそばに行ったんだ。そしたらそこにクモがぶらさがってたんだ。たぶん、あれはクモを見て逃げてったんだと思う」

そう言って顔を上げると、みんなが体を震わせ、声も出さずに笑っている。
これは、よっぽどおかしいときだ。
ケイタも、その経験があった。
でも、あれはいつのことだったろう。

「カバのくせに、弱点がクモ!?」
「どんだけよ!!」
女子もひーひー言わせて笑っている。
ケイタはどうしていいかわからなかった。

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