桃色アルバム
「なになさけない顔してんだい」

さとこに言われ、「おまえらのせいだよ」と言いたかったが、やめておいた。

「川嶋、ヒマだったでしょ」
「そんなことなかったよ。見てるだけでも楽しかった」

審判台からおりながら、川嶋が笑った。

「それより、もう6時だよ。そろそろ帰らないと」
「もう?時間たつの早いな」

上野が川嶋の腕時計を覗き込んだ。


「じゃ、片付けるか」
「あたし、ビーチボールなおしてくるよ」
「じゃあ、俺と崎野でうきわの空気抜いとくわ」

「じゃあ、俺らはシート直しに行くか」
「そうだな」


シートのはしを持つと、上野がピンと張った。

「なんか、あっという間だったな」
「ああ。楽しいときってやたらと時間が早く感じるもんだな」
「授業のときは遅く感じるのに」

ケイタは上野と顔を見合わせて笑った。

海を見ると、もう人影も少ない。
昼間の人ごみがうそみたいだ。
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