桃色アルバム
そんなことを考えていると、ドアーがノックされた。
「入るわよ」
母親の声がドアーの向こうから聞こえる。
ケイタはあわててだらしなく緩んだ口を引き締めた。

「なに」
背を向け、ぶっきらぼうに言う。
必死にこらえても口元が緩んでしまう、だらしなくニヤけた顔を見られたくなかった。

「今日、何かあったの?担任の先生から電話があったのよ」
・・・・・・・・カバのヤツ・・・・・
「あなた、先生に新学期初日から反抗したんですってね。静かないい子だったのにって先生もがっかりされてたわ」

ケイタは口をつぐんだまま何も言わない。
こういうときは黙っているのが一番だ。
「ちょっと、聞いてるの、ケイタ?」
母親の声が荒く、大きくなってくる。
(うるさいな)
ケイタは母親を押しのけ、階段を駆け下りた。
「ケイタ!!!!」

ケイタはその声を背中で聞き流していた。
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