桃色アルバム
裏の校舎は、寒いからか人影がなかった。

「すげぇ」
ケイタは思わず声をもらしていた。

大きな木がピンク色でおおわれている。
ひらひらと舞い落ちる花びらさえも、光って見えた。

「見事なものだよな」

神桜から声が聞こえた。
ケイタたちが驚いていると、神桜の後ろからゆりかと川嶋と渡部がひょっこり顔を出した。

「なんだ、川嶋か」
「すげえよな、こんなに花咲かすんだぜ」

渡部が木をたたいて言う。


「春休みはもっとすごいんだって。みんなで見にこようよ」
ゆりかが笑いながら言うと、みんなが「そうだな」と言った。


そのとき、始業のチャイムが鳴った。

「このチャイムも、今年で何回聞いたっけ」
「今年はすべてが短く感じるよな」

川嶋がしみじみと言う。

そのとき、校舎の窓から伊藤が首を出した。

「こら、おまえらー。早く教室もどれ!」
「はーい」

ケイタたちは顔を見合わせ、笑いながら走った。
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