桃色アルバム
「ゆりか、泣くんじゃねえぞ」
「間宮の言うとおりだ。上野はまだ生きてる。すぐに元気になるさ」

川嶋も強い口調で言った。


それから何分たったか。
ケイタたちはずっと立ったままだった。


いきなりポン、とたたかれビクリとして振り返った。

「間宮。外の空気すいにいこうぜ」


崎野が言いながら歩き出した。
ケイタもその後ろについていく。


外へ出ると、強い風がケイタたちをおそった。

でも、誰も寒いというものはいなかった。



みんな黙って暗い空をながめている。

桜の花びらがいくつか、足元に落ちてきた。

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