桃色アルバム
辺りを見ると、今まで気づかなかったが、桜の木でいっぱいだった。


「昨日なんだよ・・・」

さとこが声を震わせながら言った。

「つい昨日、上野といっしょに桜を見たのに・・あんなに笑ってたのに・・・・」

どうしてあいつなんだ。



それは、みんなが思っていたことだった。



自分には無縁だと思っていた。

自分のまわりにいるヤツが、友達が、事故にあうなんてないと思って生きていた。

ありえない、と。


「また見れるさ」

ケイタは知らないうちに声を発していた。

「あいつが死ぬわけないだろ」

その声が自分でも驚くほど大きく、その場にいた大人や子供までこちらを振り返った。

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