桃色アルバム
「そうだね」


さとこがケイタを見てにっこりした。

「俺たちがあきらめたら終わりなんだぜ」

そう言って崎野が泣きそうになっているゆりかの頭をつついた。


「・・・うん」

ゆりかが、はじめて笑顔をみせた。

「私、なんかのどかわいちゃった。何かあったいかいもの飲もうよ」
「そうだな。あいつが戻ってきて、俺たちの声がガラガラだったら笑われちゃうぜ」


崎野が言うと、はじめてそこに笑いがあふれた。





―上野。おまえには、こんなに待っていてくれるやつがいるんだ。
 俺たちの期待を裏切ってくれるなよ。


病院へ入りながら、ケイタは心で思った。
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