桃色アルバム
「・・・・・・・・・ですので、くれぐれも知らない人についていかないよう・・」


蒸し暑い体育館に、何百人もの生徒があつまる。

ケイタたち3人は、生徒のうしろをそろそろと歩き、自分のクラスの出席番号のところへ行く。

3人が教室へ入ったときには、誰一人として残っているものはおらず、体育館ではもう校長の話が半分以上おわっていた。

「おい、ずるいぜ」
3組の斜め後ろのほうから、渡部が女子のあいだから顔を出していた。

「いいだろう」
「いいだろうじゃねえよ。俺なんて、さっきから5分も校長の話聞いてんだぜ。暑苦しいったらねえよ」
そう言って、ぱたぱたと襟の部分をつまみ、仰ぐ。



どこの校長も、話がやたらと長い。
そんな話をほとんど聞くことがなかったんだから、ケイタは遅刻してよかったと思った。

なんとなく1組のほうに目をやると、さとこと目が合った。
暑そうに、袖で汗をぬぐっている。

そんなさとこを見てニヤリと笑うと、さとこが舌を出して親指を下に向けてきた。
向こうも笑っている。
ケイタは苦笑すると、したたる汗をぬぐった。

もう明日から夏休みだ。
去年は、楽しくもなにもなかった。
だが今年はなにかおもしろいことがおきそうな予感がする。

ケイタが無意識にニヤけていると、「みっともない顔するんじゃない」と斜め前のさとこに頭をはたかれた。
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