桃色アルバム
ベッドに寝転んでドンの耳をカリカリとかいていると、電話が鳴った。

廊下に出て、二階においてある子機をとる。


「はい」
「上野ですけど、ケイタくんいますか」

電話口から聞き慣れた声が聞こえてくる。

「俺だ。なんだ?」
「間宮か。いま勉強してるか?」
「ぜんぜん」
「俺もだ」

そういって、ふたりで笑った。

「なんか、集中できねえんだよな」
「イスに座ってても、ほかのこと考えちまうんだよ」

ケイタはため息をつくと、上野が笑った。

「どうせそんなとこだろうと思って、電話してみたんだ」
「明日は、集まんねえのか?」
「集まらないとでも思うか?」

顔を見なくても、上野のニヤリとした顔が思い浮かぶ。

「思わねえ」
「明日は川嶋ん家だ。遅れんなよ」

それから少しくだらない話をして、電話を切った。


―友達と宿題なんて、中学はいってから初めてだな。

ケイタはそう思いながら、さっきから足に飛び付いてくるドンを抱き上げた。
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