桃色アルバム
「ここは・・・・・?」




ケイタはあの後、上野に連れられて学校を離れた。
ずんずんと歩く上野を追いかけていると、いつの間にか知らない道へ来ているのに気づいた。
きょろきょろしているケイタをよそに、上野は無言で進んでいく。
路地に入ると、いつの間にかねずみ一匹すらいない暗い道を歩いていることに気づいた。

(これは・・やばいんじゃないか・・・?)

ケイタはだんだん不安になってきた。
(こいつ、ヤバい薬とか使ってたりして・・・)
そう思うと、鳥肌がケイタの体中にブワッとあふれ出てくる。

「ほら、ここだ」
そう言って上野が振り向くとケイタの体にはこぼれ落ちそうなほどの鳥肌が全身を包んでいた。







「俺たちの秘密基地だ」
さっきから笑いっぱなしの上野がひーひー言いながら言った。
「そんなに笑わなくてもいいんじゃねえの」
「だってお前、以外と怖がり・・・」
ケイタは恥ずかしくなって上野のももを思いっきりつねった。

「いてえ!」
飛び上がる上野を横目に見ていると、中から人影が見えた。
「・・・っ誰か来る!!」

悪いやつじゃないだろうな、と思いながらケイタはかまえた。
「あ、さとこ」
上野が人影を察して言った。
「へ、さとこ?」

振り向いて上野を見ると、腹に衝撃がはしった。

「ぐはッ・・」
「失礼なヤツだね。女相手に本気で構えるなんて」

「おお、さとこナイスボディブロー」
上野が手をたたくと、さとこと呼ばれた少女はにっこりした。
「なんだ、間宮じゃない」
腹を押さえてうずくまるケイタを見て、少女が言った。
「あたしは高橋さとこ。あんたの隣のクラスだよ、確か」
「さとこの両親は警察官なんだ。だから小さいころから鍛えられてるってワケ」

上野が説明してくれているが、へえ~そうなんだ~なんて今のケイタには聞ける状態じゃない。
たった一発のボディーブローが、こんなにも効くものだとは思わなかった。

「あ~あ、さとこのせいだぞ。医者に持ってくか。しかもこんな入り口じゃなんだしな」
「そうだね」

言うなり、上野はケイタを抱え、奥へと連れて行った。
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