桃色アルバム
沈黙が流れたとき、かき消すように電話が鳴った。

「はい、川嶋ですが。・・・・崎野?」
全員の視線が電話機に集中した。

川嶋がみんなに聞こえるようにオンフックを押した。

『みんなそこにいるのか?』
「いるぜ。塾はどうした?」

横から渡部が口を出した。

『めんどくせえから、抜け出してきたんだ』

電話の向こうから、崎野の明るい笑い声が聞こえる。

それを聞いていると、自然とみんなの顔に笑みが浮かんだ。

気分屋の崎野は、みんなを明るい気持ちにさせてくれる。
まだ短い付き合いだが、ケイタは崎野のそういうところが好きだ。

「おまえ、なかなかやるじゃん。で、こっちくんだろ?」
『当たり前だろ。宿題は進んだか?』
「ぜんぜんだ」

上野が言うと、崎野がまた笑った。

『だと思った。おまえらができるわけねえもんな』
「言ってくれるじゃん。で、今日の晩花火をやるかって話になってんだ」
『どうやったらそういう話が出てくんだよ』

崎野のあきれた声が聞こえた。

『ま、いいか。で、いくつ買う気だ?』
「それを、今考えてんだ」
『なんなら、買ってってやろうか。金なら持ってるし、この公衆電話の近くに花火屋もあるしな』
「おまえ、専門店で買う気か?」

上野が驚いた声を出した。
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