桃色アルバム
「これは、さとこがやったのか?」
「そうだよ。かるくね」
「内臓が破裂してるぞ」
少年の言葉にケイタは飛び起きた。





「いっつ・・・・」
「ばか、うそだよ」
その少年はケイタの頭をペン、とたたく。

「ホントのとこはどうなんだ?崎野」

「なんてことないな。ちょっと痛むだけだろ」
「自分でいうのもなんだけど、あたしのパンチは効くからね」
「いや、どっちかって言うと蹴りのほうがすごいぜ」




ケイタははしゃぐ同級生たちを横目に、小さくため息を吐いた。



自己紹介は、さっき痛みでうめいているときにご丁寧に長々としてもらった。




「医者っつっても、ただ親が医者なだけだろ?たいしたことねーじゃんか」
ごろんと横になりながらケイタは言った。
「ばっか。将来は医者って決まってんの。これは俺がなりたいんじゃなくて、運命付けられてんだぜ。ついてねえよな」


「だから、こいつは勉強ばっかなんだ。そんな親持つと、つらいよな」
上野が崎野をおちょくる。

「だから、開放されるためにここに来てんじゃんか」
そう言ってまわりをぐるりと見渡す。




ここは、数年前に廃校になった小学校だと言った。
ケイタたちは今その中の保健室にいる。
この秘密基地には上野が声をかけた、日常に不満を抱いているやつ、大人に反抗心を抱いているやつのたまり場だとか。



「そろそろ、集まる時間だよ」
腕時計を見ながらさとこが言った。
「集まる、って?」
「あと3人いるんだ。大体みんなこの時間帯に来る」
「俺らはちょっと早かった、ってことだ」

自分と同じ考えを持つやつらがそんなにもこの学校にいたのか、とケイタは思った。
上野は、もっとそんなやつがいてほしかった、と言うがケイタにとっては十分うれしかったのだ。

「おい間宮。何ニヤけてんだよ」
「に、ニヤけてなんかねえよ!」



そんなやり取りをしていると、入り口のほうが騒がしくなった。
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