桃色アルバム
「ここは、幽霊が出るといううわさがあるんですよ。実際、何人も神隠しにあっています」


そう言うゆうの顔面に、月の光があたり青白くみえる。
浴衣が夜風になびき、祭りの騒ぎなんて聞こえなくなっていた。

ケイタは気が遠くなりそうになりながら、必死に瞬きして気を紛らわせる。


「そ、そんなこと知らなかったぜ。なあ?」
「ごめん間宮。俺知ってた」
「知ってたんなら、何で教えてくれなかったんだい」

さとこがするどく川嶋をニラみつける。

「だって、みんなノリ気だったしさ。おもしろそうだったから」

ごめん、と頭を下げる川嶋に、さとこが大きなため息を吹きかける。

「どうすんだい。3番手の上野と崎野はもういっちまったってのに」
「てか、どうして俺たちはもどってこれたんだよ」

そんなこと知るか、とさとこと川嶋からニラまれ、ケイタは小さくなった。



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