桃色アルバム
墓場の中はさっきより霧が多く、やけに肌寒かった。
実際にはさっきと変わらないのだが、渡部たちがいなくなったと分かった今、より怖く感じる。

「霧で前が見えねえな」
「まず、霧がかかってる時点でおかしいということには、誰もつっこまないんですね」

懐中電灯を持っているゆうが、後ろのケイタたちを照らす。

「霧なんかより、ゆりかたちのことのほうが気になるよ」

さっきからさとこはどこかソワソワしている。


「さとこ、ゆりかは大丈夫だぜ」

さとこの肩をたたき、元気付けようとニッと笑った。

「・・・・当たり前だよ」
相変わらずだ、と思いながらも、さとこの顔に笑顔が浮かんだのを見てうれしくなった。
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