桃色アルバム
「それにしても、カバのやつ何様のつもりなんだろうねぇ」
さとこが眉をよせながら腕をくんだ。

「あいつ、自分が一番えらいと思ってんだよ。だからほかの先生からも嫌われてるんだ」
「なんとかなんねえかな」
崎野が上野の顔を見る。
「なんとかって?」
「カバがこれ以上調子付く前にこらしめてやることはできないかってことだよ」

「悪い子にはおしおきしなきゃ」
「おしおきならあたしに任せてよ」
「ずるいぜ、さとこ。俺もいんだから」
ゆりかが言うと、さとこも渡部ものってきた。

「おもしろそうだな。間宮はどう思う?」
「へっ?」
まわりの話を聞いているだけだったケイタは、いきなり名前を呼ばれ反射的にイスから浮き上がっていた。

「何か意見はねえか」
川嶋に見られ、ケイタは必死に小さな脳みそを振り絞り、情報を得ようとした。
何もないな、と言いかけたとき。
何かが頭のすみをかすった。

「あ、カバの弱点。おれ知ってるかも!」
思わず大きな声を出していた。
みんなに一斉に振り向かれ、ケイタはちょっと恥ずかしくなった。
「いや、たぶんだけど・・・」
自然に声が小さくなる。

「いいって、間宮。お前は素のほうがいいぜ。間宮に控えめは似合わねえよ」
上野が言ってくれた。

どうしてこいつに俺の思ってることがわかるんだろう。
ケイタが驚いて見ていると、今度は崎野がニヤリと笑って言った。

「どうしてわかったんだ、って思ったろ」
「あんた、顔にでやすいよ」
みんなに笑われて、また顔が熱くなった。

素のほうがいい、とみんなに言われてなんだか胸がほかほかとあったかくなるのを自身で感じた。
< 9 / 216 >

この作品をシェア

pagetop