ちょっと、ひと息つきませんか?
 ''けど、仕方ないか……''諦観を交えて健太郎は思った。自分の容姿と病気によるからだ。
 ''せやから、俺に関わらんといてくれ''
 そう心で叫んだし、声に出て言うときもあった。
 ''ドクンッ…''
 先程まで、至って静かだった心臓の鼓動が一際強く鳴り出した。
 「ちょっと……やめ…今、来るなや……」
 そう呟く健太郎は意識的に自分の胸を押さえていた。鼓動を抑えるように……
 しかし
 ''ドクンッ ドクンッ ドクッ''
 「あかんて……」
 ''ドクッ ドクッ ドクッ ドクッ''
 健太郎の思いとは裏腹に、心臓の鼓動は強く速くなっていった。
 健太郎はその場に立ち尽くした。動いてしまえば、鼓動で心臓が、破裂しそうだった。
 その場で立ち尽くすこと数分。終わりの見えないと思われた強い鼓動も少しずつ落ち着きを取り戻したように''トクン トクン''と穏やかなリズムになった。
 「ふーう……」
 立っていただけなのに、めまいと疲労感を覚えた。
 「もう…ええってー」
 ''少し休もう''そう思い、健太郎の目の前に映った見慣れたプレートが招いているようだった。
 ''喫茶店 ちょこっと一息'' ''ちょこ''
 ちょくちょく足を運び、今までは馴染みの店であった。
 「休むなら…やんなー」
 健太郎の足は、自然に''ちょこ''へと運ばれていた。
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