ちょっと、ひと息つきませんか?
  そのため、健太郎が介護福祉士という職種就いていること納得できることであった。ただ、時折健太郎がみせるなにかがつっかえたような、吐き気を飲み込むうような苦い表情垣間見えることがあった。
  その日突然慌ただしく、店のドアのベルが入ってきた人物の気持ちを表現するかのように鳴り響いた。健太郎である。
 「マスター……すいません。ちょっと休ませてもろうてもいいですか?」
 「何を遠慮してんねん。休みー。今、誰もおらへんからソファーで横になるか?」
 「いや、大丈夫です。ここ使わせてもらいます……」
  そう言い健太郎は、窓側のテーブル席に行き腰を落ち着けた。その表情は冴えず、普段の爽やかで活発な彼のイメージとはかけ離れていた。それは、触れると崩れてしまいそうな儚い像にも見えた。健太郎はうずくまっていた。何かに耐えるように、抗うようにー。
  しばらく固まったままだった健太郎は、顔を上げて背もたれに身を預け、溜まってる全ての物を出しきるように、深く息を吐いた。吐いた彼の表情は、幾分和らいでいた。
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