青い瞳に映るもの


「ゆきちゃ…」


謝ろうとしたとき、家の二階から

母の声がした。



しまった!ゆきちゃんの声で起きてしまった。
僕は慌ててゆきちゃんのほうを見た。



…ゆきちゃんは居なかった。



「お母さん、なんでもないよ!」

必死に言い訳をしたが僕の慌てぶりに母が不審に思ったのか降りてきてしまった。


「ゆうき、なんなのよソレ」

母の指差すほうを見るとゆきちゃんの殺した猫だった。

「猫。死んでたから埋めてあげようと思って。」



1月の夜なのに汗が吹き出る。


「殺したの?」

母は今にも泣き出しそうな顔で僕の目をジッと見る。


「殺すわけないじゃん!」

初めて見た母の顔に戸惑って大きな声が出てしまう。
きっとこの時の母の気持ちは僕がゆきちゃんにさっきまで向けてたモノと同じなのだろう。


「だってあんたの手についてるもの…」



僕の手に…ついてるもの…?

それは袋に手をいれたときについた猫の血だった。


「あんた…なにしてるの?」

「僕は殺してない!」


理解されないって、こんなにも苦しくて悲しくて虚しいんだね。ゆきちゃん。


「最低ね。早く埋めてきなさい」

冷たいモノが僕の身体を貫いた。
きっとこれは包丁なんかよりずっと痛い。
言葉って武器はどんなものより痛い。

母は中庭に僕を置いたまま寝室に戻っていった。

心がジンジンして痛くて苦しかったけど何故か慣れた感覚だった。


母の寝室からはすすり泣く声が聞こえる。


何故か僕は背徳感でまみれていた。



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