ふたりの言葉。
「琴、どうした?」
若葉はそう言って、私の頭を撫でようとする。
「やめて!」
私は、近づいてきた若葉の右手をパシッと振り払ってしまった。
謝らなくちゃいけないのに。
バッと若葉の顔を見ると、若葉は酷く傷ついた顔をしていた。
「ち、違うの、若葉…ご、「ごめん。今日は俺、先に帰るわ」
若葉はそれだけ言うと、立ち上がってスクバを肩にかけ直して学校を出ていった。
待って、若葉。
私は、この時何をすれば、どうすればいいのか分からず……ぼんやり、若葉の小さくなっていく背中を見送るだけだった。