半分のキモチ
お昼までかっちゃんと海を見ていた。


「いや、いや、斎藤さんなんて鬼だぜ」

「そう?優しそうだけど、」

「中学の斎藤さんを知ってたら、そんなこと言えねーよ」

「でも、一緒にバンドやってるじゃん。仲は良かったんでしょ?」

「俺は斎藤さんより真吾君と仲良かったからな。で、真吾君が斎藤さんと仲良くて」

「そうなんだ」

「だから、真吾君がバンドやりたいって言った時は余裕で断ってたんだけど、メンバーで斎藤さんの名前出されたら怖くて断れなくなってさ」

「えー意外」

「マジ鬼だから」

「じゃあ、今度会った時に聞いてみるよ」

「聞くって?」

「鬼なんですかって、」

「いや、今はすっげー優しいよ。ってか、それは聞いちゃダメだろう~」


こうやって、笑えることが不思議だった。
朝はあんなにも辛かったのに、


現実は変わらなくても、今はキモチが少し軽くなった。


波の音の癒しのおかげなのか、
かっちゃんがそばに居てくれたおかげなのか、
そんなことは考えなくても分かる。


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