半分のキモチ
ここに来る時は、素直に泣くことが出来なかった。
悲しいのに、苦しいのに、それを吐き出せず、
全部、胸に押し込んでいた。


清水へのどうしようもない想いだけが、胸に溢れて息も出来ないくらいだった。


「もしだったら、バンドの練習とかも見に来る?でも、練習見ても楽しくないか……やっぱ、楽しむならライブだよな……一応、夏休みに入ってすぐあるんだよ。それ以外にも最低三回はやりてーなって話してて……宮本?聞いてる?」


こうして普段と変わらないかっちゃんが、どれだけ私を気遣かってくれているか良く分かる。
私も同じだったから……
普段と変わらないことが、相手を好きでいれる条件。
このもどかしい距離を保つことが、相手を好きでいれる条件。


きっと、これ以上を望んでしまったら、好きでいることさえ許されなくなる。


だけど……
同じだけど、かっちゃんには私より少しの勇気がある。


「宮本が来てくれるって言うなら、ラブソングでも歌っちゃおうかな~」


素直に気持ちも伝えてくる。
だから、素直なその気持ちが胸を熱くして行く。
素直なその気持ちに……


「ラブソングなんて歌えるの?」


少し……
答えたいと思ってしまう。


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