半分のキモチ
「宮本」


グイッと掴まれた腕が痛い。


「ヤダ」と抵抗してもそれは意味がなかった。


「泣いてんじゃん」


俯く私の頭の上から清水の辛そうな声が聞こえた。
私を掴む腕に力が入ったのが分かった。


「な、泣いてるけど、泣いてない」


清水を困らせたい訳ない。
ただ清水を好きなだけなのに……


「何言ってんだよ」

「泣いてるけど、別に清水のことじゃないから安心してよ」

「何だよそれ……」


ギュッとまた清水の腕に力が入る。


「清水、痛いよ」

「お前、本当に何も分かってねーよ」


一瞬、それは本当に一瞬だった。
掴まれていた清水の腕は私を抱きしめ、清水の体温を近くで感じていた。



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