この手を離さない
兄弟なんかじゃない!
「奈美!待たせてごめん」



「本当だよ!どれだけ待ったと思ってるの!?」



これは、待ち合わせ中のカップルの会話ではない。



待たされたのは、バスケ部の部費の支払い。



回収できないのはマネージャーの責任になるというのに、さほど悪びれる様子もないのが腹立たしい。



こいつはいつもそう。



だらしなくて、お調子者で、いいかげん。



しかし不思議なもので、いい所を探す方が難しいこの男に、私の心はがっちりと捕らわれて逃げられずにいる。



もっとも、逃げる気なんかさらさら無いんだけれど。

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