この手を離さない
「そんなもん慣れだ! 気にすんな!」



側で話を聞いていた斎藤さんが、光輝の隣に並び肩を組んだ。



「確かに、大変なことが山ほどあると思う。正直、今の日本は障害者が生きやすい世の中だとは言い難いよな。『障害は個性だ』なんて言いながら、差別なんかも、昔よりは減ったかもしれないけど依然として残ってる。街中の施設の整備もまだまだ行き届いてない。ムカつくよな。俺らの本当の障害って、この脚ってよりは世間の偏見なんじゃないかと思うことがあるよ。でも、車いすに座って見る地上1メートルの高さからしか見えない景色、俺らにしかわからない世界観、なかなか捨てたもんじゃないんだぜ!」



言い終わると同時に、光輝の髪の毛を思いっきりクシャクシャにした。


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