この手を離さない
静かなパイプオルガンの奏でる賛美歌が流れる、ガラス張りの光溢れるチャペルで花嫁の入場を待つ。



ドラマや雑誌で見たことがある、バージンロード。



父親と歩む道は、今まで花嫁が生きてきた人生。



そして新郎と腕を組んで歩む道は、これから2人が共に生きていく新しい人生を表しているらしい。




チャペルの扉が開き、未央とお父さんが腕を組んで現れた。



家族として愛し愛されてきた日々を噛みしめるように、一歩一歩ゆっくりと。



神父様の前に立つ橋田先輩は、そんな2人を目を細めて見つめている。





「娘を頼むよ」



未央の手がお父さんの手を離れ、橋田先輩に繋がれた。



言葉少なく頭を下げる未央のお父さんの目には涙が光っていた。



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