この手を離さない
鈍感!でも、好き
「おばちゃんおはよう!」



いつも通り朝7時半、光輝が我が家にやって来た。



小学生のころから、私達はこうして一緒に登校している。



「光輝君おはよう。今日はスーツ買いに行くんでしょ?夕飯は外で食べて来るの?」



「そうだな、部活終わってから行くからたぶん食べて来るかな。だから、奈美の分の夕飯は用意さなくていいよ」



お母さんと光輝の会話を聞きながら、私は身だしなみチェックに気が抜けない。



朝一番に好きな人に会わなくてはいけないというのは、嬉しい半面気苦労も多い。



それにしてもお母さん、夕飯のことなんて私に聞けばいいのに。



でも、そっか。



今日は夜まで光輝と一緒にいられるんだ。



無意識に顔がほころんでしまう。

< 29 / 191 >

この作品をシェア

pagetop