この手を離さない
「奈美ー!早くしなさい!光輝君いつまで待たせる気なの?」



「奈美!部活遅れるぞー!」



階下から聞こえる2人の声に急かされ、慌てて階段をかけ下りる。



「はいはい、お待たせしましたよっと」




私が靴を履いている横で、お母さんが財布からお札を数枚取り出した。



「はいこれスーツ代……って渡してもあんたなくしそうだから、光輝君奈美の分も預かってくれる? 余ったらそれでご飯食べてきていいから」



私ではなく光輝に手渡し、



「うん、いいよ。かして」



と光輝も自然に受け取っている。


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