この手を離さない
「ば、ばか!そんなわけないでしょ。親達が勝手に私達をセットにしてるだけ。息子がスーツ買うならついでに娘も済ませちゃえ!みたいな」



「なるほどね。奈美の家と光輝の家って本当に仲いいんだね」



「まったく困ったもんだよ。私は兄妹になりたいわけじゃないんですけど!」



なりたいのは妹じゃなくてお嫁さんなんですけど!



「でも、一緒に出かけられてよかったね。街で奈美達を見かけても邪魔しないように絶対に声かけないから。じゃあ、私先に行って準備してるね。どうせまだ全員集まってないだろうから、ゆっくりおいでよ」



「ありがとう。ドリンクは私が持っていくから、ユニフォーム任せていい?」



「了解! じゃあまた後で」




未央が去った後、私はまた口元が緩むのを必死で押さえた。



デートかぁ。



私と光輝も、知らない人達から見たらカップルに見えるのかな?



そうだったらいいな。



せめて、知らない人達から見た姿だけでもカップルでありたいもん。



こんなことを考えている自分が急に恥ずかしくなり、雑念を振り払うように体育館へと走った。



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