この手を離さない
「軽く飯食ってからにしようぜ」



光輝の提案によって、最初の目的地はファーストフードになった。



セットを注文し、テーブル席に着いた。



土曜日のお昼時、まして今は夏休み期間。



店内は全席とも満員だった。



カップルも多いけど、それと同じ位家族連れも多い。



さっきから、私はカップルではなく斜め向かいに座っている家族が気になっていた。



比較的若い夫婦と5歳位の男の子の3人だ。



絶えず笑顔で、特にご両親の男の子に向ける優しい目に心を打たれていた。



私も光輝とあんな風になりたいなぁと、憧れる対象がカップルを通り越して夫婦になってしまっている。



「おーい!さっきから何見てんの?」



光輝は私の顔の前で手を振りかざす。



「あそこの家族連れ。仲良さそうでいいなぁって」



「奈美は子供好きだもんな」



光輝、覚えていてくれたんだ。



嬉しくなって、返事にも熱がこもる。



「うん!大好き!」



「じゃあやっぱり将来はそっち方面行くん?」



「そうしたいな。小児病棟専属とか子供病院とか。あと、結婚したら絶対に子供たくさんほしい!最低5人」



「いいんじゃん?少子化問題に貢献してて」



光輝は他人事のように笑う。



私のその将来設計という名の妄想に、あなたしっかり組み込まれてるんですけど。





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