この手を離さない
時計は2時を指している。



「そろそろ行くか」



食べ終わってからもなんとなくまったりしてしまい中々動けずにいたが、ようやく重い腰を上げる。



「ねえ、スーツってどこに行けばいいと思う?」



「紳士服の黒山辺りじゃん?女物もそこで扱ってたはず」



「そっか。じゃあまずはそこ行こう。確かショッピングモール街にあったよね」



ファーストフードを出ると外は炎天下。



ショッピングモール街への徒歩10分が遠い……。



途中、ショーウィンドウに映った私と光輝の姿に足を止める。


こうして見ると、どう見てもカップルじゃん。



あれ? 



もしかしたら、光輝だって私のことを意識してたりするんじゃないかな!?



仮にも21歳の女の子と歩いてるんだもん。



多少はドキドキしてるんじゃない?



照れちゃって隠してるいだけなのでは?



懲りずにまたこんな淡く勝手な期待を抱き光輝の元に駆け寄ると、



「奈美見ろよ!蛇かと思ったら模型だった!よくできてるよな~」



光輝は道に落ちていたおもちゃの蛇を拾い、楽しそうに振り回していた。




……小学生かよ!




そんなおもちゃ見せられたって楽しくないっつーの!



「おい奈美!なに怒ってんだよ!」



光輝を無視して紳士服の黒山に駆け込んだ。




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