この手を離さない
どれだけの時間が経過しただろう。



手術室の扉の向こうがにわかに騒がしくなってきた。



そして、



「秋元さんのご家族の方ですか?」



手術室から出て来た術衣をまとった男性が光輝パパに声をかけ、私達4人は同時に立ち上がった。



「はい!あの、息子は……?」



「今の所は命に別状はありません。意識の方もじき戻るでしょう。詳しいことをお話しいたしますのでこちらへどうぞ」



光輝の両親がお医者様と診察室に入ったと同時に、ガラガラという音とともにストレッチャーに寝かされた光輝が手術室から出てきた。



「光輝!」



慌てて駆け寄った私の視界に飛び込んできたのは、顔や体全体に広がっている生々しい傷跡だった。



事故の悲惨さを物語るには十分すぎる痛々しさに息を飲んだ。



「今は麻酔で眠っていますから、ゆっくり面会できるのは明日以降になりますね」



笑顔で話す看護師さんに、



「ありがとうございます!本当にありがとうございます!」



お母さんと共に何度も頭を下げた。



明日には光輝と会えるんだ。



明日は部活が午前中で終わるから、面会時間になったらすぐにここに来ようと心に決めた。


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