この手を離さない
「大事に至らなくて本当に良かったわね」



帰りの車の中で、お母さんも私も同じ言葉ばかりを繰り返した。



本当にさっきまで生きた心地がしなかった。



そうだ、未央に連絡しなきゃいけないんだった。



お母さんに断ってから携帯を取り出し、未央の番号を電話帳から探す。



「奈美!光輝は大丈夫なの?」



ずっと待っていてくれたんだろうか、未央が出るまでワンコールもかからなかった。



「何とか平気みたい。明日には意識も戻るって」



「……そっかぁ。よかった……。橋田先輩!理沙!光輝無事だって!」



「橋田先輩にお礼言っといて。車呼んでもらったりしたから」



「それも聞いたよ~!橋田先輩かっこよかったでしょ?」



未央のノロケに、電話の向こうで橋田先輩が怒っている声が聞こえた。



やれやれ、こいつら完全にバカップルじゃん。


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