この手を離さない
「よう、奈美。何それ?何かくれんの?」



私が挨拶もなくドアを開けたのに、光輝は慣れたもので驚く様子も無い。



「あっ、これお母さんから……」



予想外の出来事に途切れかけた意識を取り戻す。



「マジ?おー!里芋の煮物じゃん!おばちゃんの煮物うまいんだよな。お礼言っといて。そうだ、おまえもせっかくだから上がってけよ」



「ううん、やめとく。彼女に悪いし。てかこんな可愛い彼女なんていつのまに!」



光輝の背中を力一杯たたいた。



「痛ってえな!ああ、こいつ?ついさっき、つき合うことになったんだよな?」



「うん!」



喜びに満ちあふれた声だった。
 
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