この手を離さない
「全部知ってるんだろ?」



光輝の態度は、さっきまでの荒々しさとは打って変わって明るい。



まるで、世間話でもしているんじゃないかと錯覚してしまう程に。



「参ったよ。この脚、もう使えないんだぜ?形だけはこんなにちゃんと揃ってるのに。ほらなかなかの美脚だろ?」



「光輝……」



無理やり病室に入って来たものの、私は無力にも光輝の名前を繰り返すことしかできずにいた。


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