砂時計
彼が、私の名前を呼んだ気がして目を覚ます。

ここは、どこ?

起き上がり、寝ぼけまなこであたりを見回す。自分の部屋のベッドで寝ていたハズなのに、あたりにはなにもない。

冷たい空気を纏った風が私を包むと、また名前を呼ばれた気がして、振り返る。

「やっと逢えた」

優しい声は、彼に違いなかった。でも、目の前にいる彼は、体格のいい彼とはまるで別人のように痩せ細っていた。

彼は、こんなにも痩せ細るくらいの激務やったのか……。だから、私に逢いに来れなかったんや……。

痩せた頬に触れたくて、手を伸ばそうとした。

あれ? 身体が、金縛りにあったかのように動かない。

「やっと逢えたのに、なんでそんな顔、してんの?」

彼が、寂しげな笑みを浮かべた。

「明日も、必ず逢えるから。笑顔、見せて?」

『必ず逢える』

その言葉を耳にすると、自然と笑みがこぼれた。



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