砂時計
逢えないのなら、せめて夢の中ででも、彼に逢いたい。

そう思いながら、ベッドに潜り込んだ。興奮して、眠れそうにない……そう思っていたのに、突然、睡魔が私を襲うと、瞼を下ろした。



「こんばんは」



優しい声にハッとして、起き上がる。彼が私に笑顔を見せるから、私も自然と笑顔になった。

不思議なモノクロームの世界。その中に光る、砂時計の赤い砂。彼の手のひらの上で砂時計が、赤い砂をサラサラと落とし、ときを刻んだ。

「ふたりが逢える時間は、砂時計が落ちている時間だけ」

彼は、寂しげにそう言いながらも、笑顔だけは絶やさなかった。

なにを話そうか。限られたこの時間で。聞きたいこと、話したいことが山ほどあって、言葉にならない。

赤い砂は容赦なく、ときを刻んでいく。砂が落ちる音が聞こえそうなくらいの、静寂に包まれる。

「また必ず逢えるから」

彼がそうつぶやいたとき、すべての赤い砂がときを刻み終えた。

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